EP1-Sub 帰りたくない【裕香の記憶その1】

創作 第一章Subストーリー 裕香の記憶の欠片
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最高ランク : 5 , 更新: 2023/08/12 9:15:15

記憶が浸透するように頭の中に流れていって、少しずつ記憶が戻っていく。しかも、目の前には幻が見える。これもわたしの記憶なのかな?頭の中にゆっくりと、映像と記憶が一緒に入ってくる。

(すご…これがアイグレーさんの魔術…ってやつ?とにかく、このまま映像を見ていったらわたしの記憶が全部戻るかも…)

わたしは見逃すようなことがないように、しっかりと目を見開いて、このままどうなっていくかを見てみた。








そうだ、わたしの名前は千聖裕香。13歳で、今年から中学校に通い始めた。
一緒に住んでいるのはお母さん一人。お父さんが居ない理由は…まだよく思い出せない。
マジックを趣味にして楽しんでいたわたしは、あまり普通の中学生女子っぽくはなかったかもしれない。
マジックを始めたきっかけは何だったか。見てほしかったから?まだそこまでは思い出せない。

「ゆーかちゃん!昨日の『アッコちゃん』見た?」

「んー、見てない。わたし、そんなにテレビ見ないもん。」

「えーっ!アニメ好きじゃないの?『おそ松くん』も見てないの?」

あ、そんなわたしにも友達はいたみたいだ。同い年で近所に住んでる、名前は…そう、智子。初めてマジックを披露して喜んでもらって、それが嬉しくって今も練習を続けている。
この子はテレビアニメを好んでいて、わたしに見ることをよく勧めてきてた。ニコニコして人懐っこく話しかけてくる智子は、見ていて癒やされる。…悪く言えば、人に騙されそうな感じの女の子。

「ね、アニメよりもさ、またマジック見てくれない?」

「えーー、いいけどさぁ…別にイヤじゃないんだけど、たまには他のことしてみない?」

「他のことって?」

智子は流行り物が好きだった。年上の兄姉がいたのが理由だったっけ。その辺りもまだ曖昧だ。
わたしも別に、アニメが嫌いってわけじゃない。逆に好きな方。少し前まではほんとに興味なかったんだけど、最近公開された『トトロ』を見てから好きになっていった。

「うーん、せっかく夏休みなんだしさぁ…遠いとこに旅行しない!?絶対楽しいよ!」

この時は夏休みだった。8月の暑い日で、夏休みの終わりはまだ先で、智子は結構暇だったみたい。
智子は楽しいことが好きな陽気な子でもあった。さぁ、その後、わたしはなんて言ったっけ。

「ううん。…わたしは行けないよ、どこにも。」

やけに寂しそうに、わたしは呟いた。
…どうして、どこにも行けないんだっけ?















「……ただいま。」

急に場面が飛んだ。さっきまで智子と一緒にいたのは智子の家の中だったらしい。でも、今はわたしの住んでた家の中だ。飛んだところは、まだ思い出せてないってことなのかな?
それにしても、なんだ、別にどこにも行けないことないじゃん。この時のわたしは嘘つきだ。

「裕香、おかえり。」

あ、この人がきっとお母さんだ。優しそうな女の人。凄くいい人って感じ。
………あれ。記憶が無かったはずなのに、この人の顔、どこかで見たことがあるような。
そう思った時、目の前にいた過去のわたしはお母さんに見られないように後ろを向いて、

「…帰りたくなかったのに。」

すごく小さな声で、ぼそりと何かを言っていた。
…帰りたく、なかった?

「もう帰りたくない……帰りたくない…帰りたくない…帰りたくないよ……帰りたくない帰りたくない帰りたくない帰りたくない帰りたくない」

帰りたくない。

…なんで、わたしはどこにも行けなくて、帰りたくないって思ってたんだろう。
分かんないけど…

(どうしよう。帰ったらダメな気がする。凄く嫌な予感がする…)

そう感じた瞬間、またわたしの頭の中はまっしろになった。

ハノウ


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